Neo Culture #Journal

Neo Culture #Journal

ある文化がある異文化を受容するには、母体となる文化においての既成概念の破壊と伝統の再構築が必要となる。 Neo Cultureは、その過程を人為的かつ局所的に再現しようとする、一種の実験である。webページ: horizon.boston

ガラムマサラを深掘りしてみた。Ⅰ-概説

-インドカレーと言えばガラムマサラ

 このコラムではガラムマサラについて、「北インドのおうちカレー 上 加筆修正・PDF版」では書ききれなかったもう少し詳しい部分の説明をしていこうと思います。ガラムマサラとは複数種類のスパイスを混ぜ合わせたミックススパイスのことです。

表題の通りインドカレーと言えばガラムマサラ!と言ってしまっても言い過ぎではない程にインドカレーとガラムマサラはインドカレー作りに頻繁に登場します。とは言ってもガラムマサラはインドだけでなくパキスタン、ネパール、スリランカ、バングラデシュに同じ名前、もしくは違う名前の同じもしくは似たような性質のものが存在しています。なので、たまにガラムマサラは北インドのものと言われることもあるのですがそれはちょっと違いますし、ガラムマサラを理解することは、南アジアの料理を理解することにも繋がります。

 

-ガラムマサラのバリエーション①

 ガラムマサラには様々なバリエーションが存在していると言われています。実際のところはどうなのかと言うと、確かに「そう」とも言えますが「そうじゃない」とも言えます。しかしながらここで「そうじゃない」と言ってしまうと話が大変ややこしくなってしまうので、ここはひとつ「ハイそうです」ということで話を進めていこうと思います。

 輸入食材店に行けば四角い箱に入ったガラムマサラという商品を簡単に見つけることができます。スーパーでも、丸い瓶や缶に入ったガラムマサラと書かれた商品をスパイスコーナーで見つけることができます。これらは商品によって全てスパイスの配合が違って味や香りも違うでしょう。なので市販品のガラムマサラでもそれぞれがガラムマサラのバリエーションであると言っても間違いではありません。しかし市販品のガラムマサラは香りのバランスが良くクセが無いものが多いため、およそどんなカレーにも美味しく使うことができます。

 

-ガラムマサラのバリエーション②

 ガラムマサラは自分で作ることももちろん可能です。具体的なレシピはⅡの記事に掲載してありますので、本編を読み終わったらそちらもご覧ください。ここでは手順だけ簡単に説明します。ガラムマサラの作り方はいたって簡単です。好みのホールスパイス(カルダモン、クローブ、シナモン、ブラックカルダモン、ブラックペッパー、クミンシードなど)を好みのバランスでブレンドし、フライパンで乾煎りしてから一度冷まし、細かいパウダーに挽くのです。これでガラムマサラの完成です。作業自体は簡単ですが、スパイスの配合にはちょっとしたテクニックが必要です。料理上手なインド人はみんな自分のお手製ガラムマサラを持っていますが、その中にはレシピを内緒にしている人も多くいるほどです。

 自分で作ったガラムマサラは市販のガラムマサラとはもちろん違う香りがしますが、それよりも何より違うのは作り立ての香りが味わえるという点です。作り立てのガラムマサラの香りは格別で、市販品の箱を開けたときに香ってくる香りとは一味も二味も違うのです。その格別な香りをなるべく大事にするため、ガラムマサラを手作りするインド人はあまり大量には作らず少しずつ作ってすぐに使い切るようにします。

 自分でガラムマサラを手作りする理由とメリットですが、それはずばり自分の好きな料理をさらに美味しくするためのオリジナルのガラムマサラを作れることです。市販品は自分でのアレンジがしづらいため、技術さえあれば自分の好きな料理には自分の好きな配合のガラムマサラを作って合わせることが可能です。インド人の中にもこれは野菜用、これはお肉お使ったカレー用、これは魚用などと大雑把な食材のカテゴリー毎にガラムマサラを用意している人もいたりします。この食材のカテゴリー毎のガラムマサラというのもガラムマサラのバリエーションと言ってもよいでしょう。

 

-ガラムマサラのバリエーション③

 もっと細かく、料理毎に専用のガラムマサラを作ることもあります。ビリヤニを炊くときに使うビリヤニマサラや、カップに注いだ温かいチャイにふわっと振りかけるチャイマサラも広い意味でのガラムマサラのバリエーションなのです。まとめるとつまりガラムマサラは、汎用性が高く一つ持っておけば様々な料理に使うことができるタイプと、そこからもう少し踏み込んでチキンや野菜といった感じで食材毎に使い分けるタイプと、各料理専用に用意するものとの3つのタイプに分類することが可能です。ガラムマサラについて勉強するときは、最初から細かい一つ一つのレシピに注目すると大変なので、まずは大雑把なガラムマサラの分類を把握することが大事と私は思っています。

 

-疑問

 では一体ガラムマサラのどういった要素がガラムマサラのタイプを決定付けるのでしょうか?これには以下のガラムマサラが持つ4つの基本的性質が関係しています。

 

-ガラムマサラの持つ基本的性質4つ

①基本的にはターメリック、チリパウダー、コリアンダーパウダーを含まない。

②最低でも3種類のスパイスが使用されていればガラムマサラになる。

③使用するスパイスの種類の上限はない。

④作り手の食生活がスパイスの配合に大きく影響する。

それぞれをもう少し詳しく見ていきましょう。

 

①基本的にはターメリック、チリパウダー、コリアンダーパウダーを含まない。

 ガラムマサラは本来、ターメリックとチリパウダー、コリアンダーは含まないのですが、これには理由があります。ターメリックとチリパウダーはインドカレーの必須スパイスで、この2種類のスパイスさえあれば大抵の食材はインドカレーにしてしまうことが可能です。さらに、3種類以上のスパイスを使うインドのカレーでも、ターメリックとチリパウダーは必須スパイスなのでこの2種類が大方含まれています。しかし料理によってターメリックとチリパウダーのバランスが違うので、ガラムマサラにターメリックとチリパウダーを含めてしまうとスパイスのアレンジがしづらくなってしまい不便なのです。またコリアンダーパウダーもターメリックとチリパウダーに次いで頻繁に使用するスパイスなのですが、こちらは使う料理と使わない料理が存在するので、同じくガラムマサラに含めてしまうと不便なのです。というわけでこの3つのスパイスはガラムマサラには含みません。他にも理由はあるのですが、これが「カレー作りの観点」からの大きな理由なのでまずはこれをおさえましょう。ちなみに、ガラムマサラにターメリックとチリパウダー、後は任意でコリアンダーパウダーを加えてミックスしたものをインドではカレーパウダーもしくはマサラと呼びます。

 また家族みんながそもそも辛党の場合にはガラムマサラにチリパウダーを入れてしまう人もいますし、入れる理由は人それぞれですがコリアンダーを含めてガラムマサラを作る人もいます。

 

②3種類のスパイスが使用されていればガラムマサラになる。

 例えばインドに存在するミックススパイスでローストクミンペッパーというものがあります。ローストしたクミンとブラックペッパーを乾煎りして冷ましてからパウダーにしたものですが、2種類ではあまりにシンプルなためガラムマサラとは呼ばれません。他にもいくつか2種類のスパイスを組み合わせたものがありますが、全て個別の名称を持ちガラムマサラとは認識されていません。3種類のみのスパイスで作ったガラムマサラも相当にシンプルですが、3種類入っていればとりあえずはインドではガラムマサラとみなされます。ただ3種類のみで作るように、スパイスの種類が減れば減るほど個々のスパイスの香りや個性が際立ってくるので、なんにでも使えるといったような汎用性は持たない、どちらかというと特定の料理や用途に向けたガラムマサラといった雰囲気が出てきます。

 

③使用するスパイスの種類の上限はない。

 なんでもかんでもスパイスをたくさん入れれば良い、というわけではないですがガラムマサラにはスパイスは何種類までにしましょうといった決まりは特にありません。また例えば、ものによっては「干した青マンゴー」や「乾燥させたバラの花びら(ローズペタル)」といった私たちからするとおよそスパイスとは思えないものまでスパイス扱いされてガラムマサラに入れられたりすることもあります。また特に市販品の、汎用性を可能な限り高めたようなガラムマサラには本当にたくさんの種類のスパイスが使われています。先の3種類でガラムマサラを作ろうとするのとは真逆のことで、スパイスの種類を増やせば増やすほど一つ一つのスパイスの存在感は無くなっていき、ガラムマサラとしての汎用性が高まります。またこういったガラムマサラであればあくまで香り成分の一つとしてチリパウダーやコリアンダーパウダーを含めることも簡単になります。

 

④作り手の食生活がスパイスの配合に大きく影響する。

 例えば作り手のインド人がベジタリアンだったとします。インドは世界的にベジタリアンが多い国ですので、家では本当に野菜と豆と乳製品しか食べないインド人は実はたくさんいます。そんな人たちは肉も魚もエビもたまごも食べないので、ガラムマサラを作るときに肉や魚介などの食べない食材のことを考慮する必要がありません。なので例えばガラムマサラは(野菜料理用に)香りが穏やかなものとパンチの効いたものが一つずつあれば良いかなといった具合な話になります。またそういった家庭では特に「これは野菜用のガラムマサラ」という認識で作って使われてはいない場合があり(人によっては野菜と豆と乳製品以外は食べ物という認識でなかったりするため)「我が家のガラムマサラはこれです」というような言われ方をするわけです。しかしそれと反対にベジタリアン大国のインドでも肉が大好きなインド人一家もいたりします。そういう人たちは、こだわる人たちであればチキン用とかマトン用とかを作って使い分ける人もいますし、肉用のガラムマサラだけ作って、豆や野菜の料理はガラムマサラ抜きでシンプルな料理だけを作るとか、肉用と野菜用のガラムマサラを持つとか、その人たちの好みによって自分たちのガラムマサラを調合して持ちます。

 

長くなりましたがまとめると、ガラムマサラは自分たちの食生活と汎用性をどれだけ持たせたいかで作りたいタイプが変わってきます。しかし最近は市販のガラムマサラも質が良いので、何かに特化したものや本当に好きなガラムマサラだけを自分たちで作って、汎用性の高いものは好きなブランドのものを買って済ませるというやりかたがインドでも主流なようです。それでは最後に肝心のガラムマサラの使い方を見ていきましょう。

 

-ガラムマサラの使い方

 家庭料理でのガラムマサラの使い方はシンプルに2通りです。一つはマサラ作りのタイミングでターメリックとチリパウダー、コリアンダーパウダー、さらに使用する場合にはカスリメティやクミンパウダーと一緒に油で炒めるようにして使います。もう一つの使い方は、カレーの仕上げにさっと振りかけて混ぜながら一煮立ちさせて、料理の香りを補うために使います。ただし何にでも使うわけではなく、サブジやダルの様にガラムマサラを必要としない料理も家庭料理にはたくさんありますので、料理のタイプとガラムマサラのタイプを考えて必要な場合に必要な量を使うように心がけます。また、料理の仕上げにはガラムマサラ以外にも、パクチーやカスリメティ、刻んだ青菜、フレッシュトマト、レモン果汁など様々な食材がインド料理では登場します。

 

-ガラムマサラのレシピと用法、用量

 ここからはガラムマサラを深掘りしてみた。Ⅱ-実践の内容になります。下記のリンクより次ページにお進みください。

neoculture.info

 

-ガラムマサラのそのほかの様々な効果

 薬効等その他の話に付きましては、ちょっとマニアックになりすぎてしまったのでⅢ-マニアックの記事にまとめました。心に余裕をもってお進みください。

 

neoculture.info